カメラの絞りってどういう意味?
カメラはフィルムカメラでもデジタルカメラでも適切な量の光をあててやる形にしないと、きれいな写真を撮影することができません。
通す光の量が多すぎると、画面が真っ白なってしまって何が写っているのかわからない写真になったり、そこまでいかなくても本来の被写体の色よりも白っぽく写ってしまったりします。
逆に通す光の量が少なすぎると、画面が真っ黒になってしまったり、本来よりも黒っぽい色になって、やはり本来の被写体の色とはイメージの違う写り方をしたりします。
このような状態で写真が写ってしまうことを防ぎ、見た時の印象に近い写真を作るために、カメラにはフィルムやイメージセンサーに当たる光の量をコントロールするための仕組みが備わっています。
今回はそのうちの一つ、「絞り」について説明します。
・絞りは遮蔽版
絞りはレンズを通過する光の量を制限するための一種の遮蔽版です。レンズの前に穴の開いた板を置くだけでも絞りとして役に立ちます。
ですが写真を撮る仕組みとしては、光を通す穴の大きさを連続的に変化させられるほうが便利に使えます。こうなっていれば、レンズを通過する光の量を何段階にも変えることができて、写真の明るさの調整がとても楽になるからです。
このため今のほとんどすべてのカメラ、レンズでは、羽根型の複数枚の板を組み合わせることで、中心部の穴の大きさを連続的に変えられる仕組みが使われます。
この仕組みを人間の瞳の中の虹彩の仕組みになぞらえて、「虹彩絞り」と呼んでいます。
・絞りのそのほかの役目
絞りを変化させると、レンズを通過する光の量が変化することのほかにもいくつか写真の写り具合が変わってきます。
そのうちの一つは、ピントが合っているように見える範囲を変化することです。
光学的に厳密にみるとピントが合うところはまさに点というか一つの平面だけで、その部分を外れるとすべてピントがずれている状態になります。
ですが現実的には、イメージセンサーで光を感じる点それぞれにも面積がありますので、ある程度まではピントがずれていても、写真としての仕上がりではピントが合っているとみなせる範囲があります。
これを「被写界深度」という言葉で表すのですが、絞りを変化させることでこの被写界深度をコントロールすることができます。
具体的には、絞りの穴の大きさを小さくするとピントが合っているように見える範囲が広がり、絞りの穴の大きさを大きくすると、ピントが合っているように見える範囲が狭くなります。
絞りの穴が小さくなる方向に調整することを、「絞りを絞る」と表現し、絞りの穴が大きくなる方向に調整することを、「絞りを開ける」と表現します。
また、ピントが合っているように見える範囲が広くなることを「被写界深度が深い」といい、ピントが合っているように見える範囲が狭くなることを「被写界深度が浅い」という風に表現します。
絞りを変えたことによるもう一つの影響は、絞りを絞るとレンズの光学的な性能を向上するということです。
レンズによっては画面の周辺部で少しぼやけたような描写になるレンズもありますが、絞りを絞ることで、このようなレンズの描写性能の良くない部分を改善することができます。
ちなみに、このようなレンズの光学性能上の弱点を「収差」と呼びます。