5月26日の皆既月食撮ってみた。実は難易度が高い皆既月食撮影

先日、非常に見やすい時間帯に皆既月食が起こりました。
皆既の時間が夜8時過ぎからのスタートで子どもさんでも楽に見られる時間帯ではなかったでしょうか。

ただ、天気に恵まれなかった地域も多かったようですね。著者の住む町はギリギリ天気が持った感じで、薄雲越しではありましたがなんとか観測・撮影が出来ました。

今回もかなり暗い皆既月食だった感じで色合いは赤銅色といった感じではなく、「暗褐色」ぐらいがピッタリくるような程度の明るさに留まりました。

雲間から撮った月は暗く

皆既中は厚い雲がかかったりそのすき間からぼんやりと赤い月が見えるような感じだったのですが、全天薄雲もかかっていたようでそれがさらに皆既中の月の暗さを助長していたようです。

撮影も非常に厳しい条件になりました。

ISO3200まで感度を引き上げて絞りF8.0、シャッタースピード1.3秒程度でなんとか、といった感じです。

ですが上の画像を見て分るとおりディテイルはかなり甘め。

ピントもカッチリ合わせることが出来なかったのですが、それ以上に「日周運動」の影響が出てしまっています。

星をアップで見ると流れているのが分りますから。

とにかく皆既月食中の月は非常に暗いので撮影条件は極めてシビアです。
そのあたりをもう少しじっくり確認してみましょう。

超望遠レンズ、高感度、長時間露出の三重苦

皆既月食の撮影の難しさを一言でまとめると上の見出しになります。

まず月の見かけの大きさはすごく小さいので、それなりの大きさに写し取ろうと思ったら超望遠レンズが必須になります。

次に明るさが極めて暗いのでカメラの感度を大幅に引き上げても長時間の露出が必要になります。

このため焦点距離の長さとシャッタースピードの長さの合わせ技で、日周運動による「被写体ブレ」がハッキリと分るようになってしまいます。結果、写る月の画像のシャープさがどうしても低下します。そこに高感度設定による画質の荒れがさらに輪をかける、と。

つまり皆既月食中の月をキレイにシャープに写し取るのは非常に難易度が高いのです。ここまで来るともう「天文写真」の領域です。

対処方は?

では皆既月食をよりキレイに撮影するにはどうするか、考え方は2つあります。

1つは「天体望遠鏡」を使う
もう一つは高画素の35mmフルサイズセンサー搭載カメラと「そこそこ」の超望遠レンズを使って、「トリミング」で対応する。

です。

天体望遠鏡は正確に日周運動による星の移動を追尾できる「赤道儀」が必要です。

さらに厳密に見ていくと、月は地球の周りを公転していますので背景の恒星とは動きが微妙に違います。最新の高性能な天体望遠鏡はそこまで計算して追尾可能になっていますので、それを活用すれば極めてシャープな撮影も可能です。

そして望遠鏡に自動追尾させつつISO感度を下げシャッタースピードをうんと伸ばします。

もう一つのトリミングでの対応は、高感度特性の良い大型センサーカメラを使って星が日周運動でぶれない程度のレンズとシャッタースピードの組み合わせで撮影。画面中央部をトリミングしてサイズと画像の荒れ具合のバランスを取るやり方です。

前者は完璧な写りが狙えますが装備を準備するハードルが非常に高くなります。後者は装備面はやや楽になりますが、写りには多少妥協が必要です。

どんなやり方で撮るにしてもやっぱり難易度は低くありません。
が、頑張って狙ってみる価値のある被写体ではあります。
来年11月にもまた皆既月食がいい時間帯にあるようですから、トライしてみるのもいいと思いますよ。